ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
ガエターノ・ペッシェ

サンパウロ・レジデンシャル・タワー

1988年計画
作品写真
この作品には、特に斬新なコンセプトはない。過去の歴史を振り返れば、それがどんなに昔であろうと、人間のニーズはさほど変化しておらず、こうしたニーズを反映した建築の例はいくらでもある、というのが私の考え方だからだ。この作品もまた、人類不変の要求に応えた一例である。ゴシック建築や河を挾んだ両サイドの住民を結ぶ橋が造られた時代から、私が呼ぶところの「母なる建築」は常に存在していた。それは、絶えず宗教的な理由と実用性の両面からひとびとを魅きつけてきたのである。現代において、我々はすでに標準化の時代を乗り越え、個々のアイデンティティを確立するためにあらゆる犠牲をはらおうとしている。我々はもはや、テクノロジーの発展が、選ばれた少数の人間のニーズを満たすために存在するのではない時代に生きているのだ。このことは、建築においてもけっして例外ではあり得ないのである。
(藤塚光政撮影)

前展覧会:Some Works from 1969 to 1990 (1991)
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