この作品は、建築というよりも、空と大地の間につくられたオブジェといったほうがより正確なのかも知れない。ここでは、周辺環境の特殊性から積極的に発想を展開することで、より純粋な形が表出された。住空間の原型の一つを提示したと考えている。
私はこの陶芸家のための、小さなアトリエの設計を契機として、建築を場のオブジェと解釈するようになった。地域と人間を結び、互いのエネルギーが生成しあった豊かな場の理想像を、最小限の要素とより初源的とも受けとれる構成方法の中で探し求めている。
建築で新たな風景をつくることが、それ以後の主たるテーマとなってきた。建築の構造材を構成材へと変換し、場所に対して透けた空間のすばらしさを実感したのもこの頃からである。