ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
隈研吾

伊豆の風呂小屋

1988年
作品写真
ニューヨークでの研究員生活を終えて、日本に戻ってきて最初に設計したのが、この少しバラック風な別荘である。「悪しき現代から個人をまもる聖なるお城としての建築」というコンセプトのうさん臭さが、当時はどうしようもなく耐えられなかった。ニューヨークで書いた『10宅論』は、建築の聖性を否定するために、建築を徹底的に相対化し、解体しようとしたものだったし、その後の『建築的欲望の終焉』以下の著作も、すべて同一の問題意識にもとづいている。
この小別荘ももちろんの事「建築の聖性」の解体がテーマだった。波板、パーティクルボード、段ボールのようなweakな素材の居間、ユークリッド的な直交性の否定と形態のfragmentation。 「居間」に代表される疑似的共同性を否定し、それにかわって「風呂」に代表される直接的身体性を提示すること。これらの手法やヴォキャブラリーから、その後のぼくのすべてが出発したといってもいい。
(藤塚光政撮影)

前展覧会:建築 転送の速度 (1995)
戻る
Copyright (C) 1997 TOTO LTD.