ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
黒川紀章

ソニータワー大阪

1976年
作品写真
二十世紀の機械の時代に対して、生命の(原理)時代を宣言したのはCIAMの崩壊した1958の翌年のことであった。その後のメタボリズム(代謝と循環)、メタモルフォーシス(突然変異又は変身)そしてシンバイオシス(共生)という繰り返し援用してきた新しい時代を予言するキーワードは、いずれも生命の重要な原理そのものを表現している。この意味で私の創ってきた建築や都市は一貫して、生命の原理を追求する結果生まれたものである。いま生命の最先端の定義は、「ダイナミックに変動する関係の中で意味を創造しつづける情報の場」と定義されるが、これはそのまま当時の私のもっていた建築の定義と重なっている。
「ソニータワー大阪」は世界の都市に建設され光ファイバーのネットワークや衛星で結ばれるソニーの情報センター構想の一つとして設計された。この情報センターを通じて、世界のリアルタイムの映像情報を受・発信でき、又この情報センターをミリ波の無線ステーションとすることによって、このセンター内は勿論のこと周囲1km以内で、携帯テレビ電話を使って、映像情報をとばすことができるという情報化時代を先取りした世界戦略が練られた。残念ながらこのソニータワー大阪構想は1号のみで終わることになったが、それはあまりにも未来を先取りし過ぎた理由によるものであった。
それから20年を経て、いま世界はまさに、このような時代に突入しつつある。
(藤塚光政撮影)

前展覧会:黒川紀章 と美術館 (1991)
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