ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
Neutrium
1995年予定
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ソウルの街外れに、小さな教会がある。ゆるやかな坂に沿って日の当たらない通りを進むと、地下の方に入口が見えてくる。それは、天国に行きたい、昇天したいという願いとの対極を成している。だが、地階に着く直前に敷居が設けられ、ここから空を望むことができる。自分が子供の頃に井戸の中から空を見上げていたことを思い出して、このような造りにした。かつて空を仰ぎ見た背景には、空虚な心を埋めたいという思いと、空虚さを受け入れようとする気持ちの両方が同居していたような気がする。しかし、この作品の訴える空っぽの感覚とは、世の中には確かな存在などなにもないという虚しさではなく、空を見上げた時に遮るものが何もないという現象の表現でしかない。秩序を取り払って空っぽの状態をつくり出すことで、現代建築は人間の原点に帰れるのではないかと思う。空っぽの空間においてこそ、目に見える存在と目に見えない存在の垣根が取り払われるからだ。
(藤塚光政撮影)
前展覧会:マダンの思想 (1989)
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