ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
團紀彦

カイガラ・テラス

1981年
作品写真
(藤塚光政撮影)

カイガラ・テラスは、舞台装置性を持った計画で、私が大学院時代に設計した建築の処女作である。住宅を10年間の間だけコーヒーショップに改変する計画で、故郷の神奈川県葉山町の海のそばの一角に建てられたが、現在は存在していない。倉庫を増設して、厨房廻りを広げ、居間を拡張して、特徴の無かったエントランスを演出し、またトイレを外部に増設しながら、庭の松の木とノウゼンカズラや、佐島石の石塀を美しく見せるような工夫をして、営業スペースとして使用できるようにした。既存の木造住宅の切妻屋根は、どう考えても「住宅」のイコンを引きずっており、この場合には負のシンボルとして消去することにした。こうしたプログラムの改変と、シンボルの操作を行う必要性から、一連のカキワリ状の舞台装置を考案して、既存の環境の中にはめ込んでいる。街路からの見え方や、テラスと内部の視覚的なつながりといったパブリック性の高い「正の視点場」からの修景にウェイトを置いていたために、逆に、舞台装置の裏側といった「負の視点場」が発生する結果となっており、後からふり返ってみれば、そこからの方が、この計画の本質をより多く語っているようにも思われた。


前展覧会:群島にむけて (1992)
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